第29章 一緒に…
第三者目線
信長は、まだ体調の優れないなおを沙耶と秋野に任せ、朝餉の為広間へと向かう。
皆が揃ったのを見計らい、昨夜の出来事を告げた。
「そんな事が…」
秀吉を筆頭に、信じられないとの思いが皆に渦巻く反面、それぞれの顔には安堵の表情が浮かんでいた。
「それじゃあ、遠慮なくなおの飯を考えられるな」
政宗はにかっと笑い、政務の合間を縫って女中への聞き取りをしなければと、心に決める。
「…何があるかわからないから、もう少し情報を集めないと」
家康は悪阻に効く薬や、出産の準備を…と考える。
「…あの小娘が母か…」
光秀はそう口にはしながらも、戦の火種が降りかからぬ様に…と策を練る。
「色々と忙しくなるな…」
秀吉は、もう既に産まれた後のお披露目の事を、考え始めていた。
「そういえば…祝言は…」
三成のその言葉に、皆の思考は一瞬停止する。
「そうだ!祝言を…お屋形様!お子の産まれる前に!」
懐妊に思考がすっかり持っていかれ、皆その事実を忘れていた。
「…たまには三成も役に立つんだね」
「家康様!お褒め頂きありがとうございます」
家康の嫌みは通じず、三成はニコニコと笑う。
「みんなして、忘れてるとはな〜」
「色々ありすぎて、それどころではなかったからな」
「いつ、どのようにしたらいいのか…」
秀吉の言葉に皆考え込む。
信長も暫し考えると口を開く。
「俺は、なおの世の祝言を挙げてやりたい」
信長の言葉に皆顔を見合わせる。
「それはいい!なおが喜ぶ事をしてやろう」
秀吉は皆に声をかけると、朝餉もそこそこに広間で会議を始める。
信長は主役の一人だからと、早々に退出を願い出られ渋々それに従った。
「まずは、聞き取りだな。沙耶様にご協力を願おう。
政宗はなおの体力を戻す為にも、食事を頼む。
家康も同様だ。御典医と相談しながら頼む。
光秀、その間に戦のない様頼む。
三成は、俺の補佐だ。
お屋形様となおの祝言だ。みんな頼んだぞ」
秀吉が一気に事を告げると、その日の為にと皆一斉に動き始めた。