第28章 希望
第三者目線
二人はお互いの手を掴み、その温もりに目を開けた。
褥の中で互いの手が結ばれているのを見て、顔を見合わせる。
「なお…夢を見たか」
信長の問いになおは頷く。
「「のぞみ」」
二人は同時に名前を呼ぶ。
夢の中で信長が呼んだ幼子の名前。
「信長様…同じ夢を…」
なおの言葉に、信長は頷くとなおを抱き締める。
「まってると言っていた。かあさま、とおさまを待っていると…」
信長は夢の中での幼子の言葉を反芻する。
「信長様…私、あの夜もあの子に逢いました」
そう言うと、あの日の事を信長に伝える。
あの時聞こえなかったはずの言葉が、はっきりと頭に浮かぶ。
「とおさまが泣いてるって…笑ってる二人を待ってるって言ってました」
そう言い終わると、なおは信長の胸に縋り付く様に身体を寄せた。
「お腹の子は、俺の子だ」
信長はなおを強く抱き締めると、力強く告げた。
「貴様の身体には、奴らのものなど一滴も入っていない。子が…貴様を守ってくれたのだな」
その言葉に、なおは泣き始めてしまう。
信長はなおの、頭や背をそっと撫でる。
「けど…私の身体は…受け入れてしまいました」
「あの時…貴様は媚薬を飲まされた。それに、本当は身体が傷つくのを守る為、仕方のない事なのだ。それとも…心まで受け入れたのか」
「そんなことは!」
なおは顔を上げ信長を見つめる。
「ならばいいではないか…子が守ってくれた命。もう無駄にするな…俺の元から離れることは、もう二度と許さぬ」
信長は優しくそう呟くと、なおの頰に手を寄せキスを落とした。
「信長様…愛してます」
なおは唇が離れると、信長を見つめそう呟いた。
「知っておる」
微笑みを浮かべてそう告げる信長を見て、なおはふふっと笑う。
「やっと…笑ってくれたな」
信長はなおの額や頬にキスをする。
「信長様…私を許してくれますか」
「なお…俺を許してくれるか」
お互いがお互いに許しを乞う。
それぞれが許す気持ちを伝えるかの様に、引き寄せられる様にキスをする。
「俺の子を産んでくれ」
信長の言葉に、なおは小さく頷いた。