第28章 希望

信長目線

「綺麗な満月…」
なおの声が聞こえた。

「そうだな…」
俺は空を見上げ呟く。

気がつくとブランコに並んで乗っていて、俺の腕の中には三歳程の幼子が眠っている。

『夢か？』
夢とは思えぬ程、幼子の体温が暖かい。
なおを見ると、切なげな表情が見える。

「どうした？疲れたか」
声をかけると、一筋涙が流れる。

「なんでもないです。幸せだなって思って…」
そう言い微笑むなおを抱き締めたいが、腕の中にいる子を起こすのも忍びなく、そっと手を伸ばしなおの涙を拭う。

「…を抱いていると、貴様を抱き締められぬ」
歯痒い思いをつい口に出してしまう。

なおはふふっと笑うと、立ち上がり俺と子を慈しむように抱き締めてくれる。

「信長様…愛しています」
その言葉に一瞬息をのむ。

『夢ならば夢でもいい…覚めてくれるな』
そう思う。

「知っておる」
今までと同じ様に返事を返すと、なおはクスクスと笑う。

「何がおかしい…」
そういうと、なおはそっと身体を離し、俺を見つめる。

「なお…貴様を愛してる。何があっても離すつもりはない」
夢でも伝える言葉は変わらない。俺は想いの丈をなおにぶつける。

この夢が…

現実になればいい。

もし…

なおが拒絶しても

俺は…

なおも子も離すつもりはない

そう強く思った。



『もういい…夢から覚めても俺の気持ちは今と変わらぬ…』


「なお…」
再び抱き締めてくれた愛しい人の名前を呼ぶ。

「愛してる」
なおの声が聞こえた瞬間、腕の中から光が溢れてきて、目を見張る。

その光は幼子を包み光の珠になった。




【かあさま。
とおさま。
あいたい。
まってるからね】


不意に沙耶の言葉を思い出す。

『今日は、満月。いい夢が見れます様に…』

この夢は…。俺は自然と笑みを浮かべた。

【かあさま。
わらってるね。
とおさま。
わらってるね。
うれしい】

光の珠はそのまますっと上へと上がっていく。

「まて！」
俺はそれに触れたくて手を伸ばすと、その手は…。