第2章 心を閉ざして
第三者目線
秋野は、いつもの様になおを優しく包み込む。
腕の中では肩を揺らし嗚咽を漏らすなお。
「ご、めん、なさ、い」
小さな声が聞こえてくる。
「謝らなくても良いんですよ。なお様」
そう声をかけ暫く背や頭を撫でていると、少しづつ呼吸が落ち着き嗚咽が止まる。
「朝餉が冷えてしまいます。食べてしまいましょうか?」
そう声をかけると、こくんと頷きそっと秋野の腕からなおは離れる。
箸を持ち食べはじめたのを見て、秋野は食事を取り始める。
何も言わず、秋野は優しい表情でなおを見つめていた。
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食事が終わる頃外で足音が止まった。
「入るよ。」
声がかけられ戸が開く。
もう聴きなれた声の主。
「家康…」
「顔色は良さそうだね。湯浴みの事はもう伝えたの?」
なおの顔色を確認して、家康は秋野に問う。
「お伝えしております。」
「わかった。傷はその時に確認しておいて、もうほとんど治ってるとは思うけど、薬も用意してあるから…」
「わかりました。それではなお様。私は御膳をさげて、湯浴みの準備をして参りますので、お待ちくださいね。」
「はい」
そう返事が聞こえたのを確認し、御膳を持って外に出る。
家康もそれに続いた。
暫く廊下を進んだ所で
「なおの様子はどう?」
家康は秋野に声をかける。
「お身体の様子はとても良くて、痛みもほぼなく身体を起こすことも出来ております。ただ……」
「ただ?」
「お心の方は……。泣く事は減りましたが、表情は……。それに、『ごめんなさい』とそればかりおっしゃって…」
家康は溜息をつく。
「…わかった。信長様には俺から伝えておく。とりあえず、湯浴みに付き添ってやってくれる。1人は怖いと思うから…人払いはしっかりね。」
そう言うと、重い足取りで天主へと向かった。