第2章 心を閉ざして
なお目線
目が覚めてから数日が過ぎた。
今はあの時ほどの痛みもなく、身体を少しづつ動かせる様になって来た。
「なお様。おはようございます。朝餉をお持ちいたしました。」
そう声がして襖が開いた。
あれから、私は部屋を充てがわれそこで生活を始めた。
最初に案内された部屋は1人部屋なのにすごく広くて、逆に落ち着かなくて、城の中で1番狭い…と言っても充分な広さの部屋にいる。
「なお様。家康様より湯浴みをしていいとお許しが出たので、食事の後に一緒に参りましょう。」
「ゆあみ?」
「身体を洗って、湯に浸かる事ですよ。」
『あ〜。お風呂か。』
たまに、出てくる言葉に戸惑う。
『朝餉もインスタント味噌汁かと思ったもんね。』
「なお様?」
「あっ!すいません。わかりました。」
慌てて言うと、秋野さんは
「ふふっ」と笑いながら、お膳の準備をしてくれた。
「さぁ。どうぞ」
「いただきます。」
本当はしてはいけない事らしいけど、秋野さんと一緒にご飯を食べる。
女中は使用人だから、姫君とは食べれません!って何度も言われたけど、1人で食べるの淋しいし…。
何回も言ってたら、それをたまたま聞いていた家康が、信長様に頼んでくれたらしい。
「今日も美味しい。」
そう呟くと
秋野さんは
「今日も政宗様が腕によりをかけて作ってくださったそうですよ。早くお元気な姿をお見せしてあげなければいけないですね。」
微笑みながらそう言った。
『本当にお母さんみたいだな。秋野さん。』
出逢ったあの日から、何度もそう思う。
本当に優しくて暖かくて、何度も涙を流した。
その度に優しく抱きしめてくれて、心が温かくなる。
「なお様。」
名前を呼ばれながら、気がつくと秋野さんの腕の中にいる。
『また、泣いちゃってたみたい』
「ご、めん、なさ、い。」
そう言うのがやっとで、でも黙って秋野さんは私の頭を優しく撫でてくれる。