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『イケメン戦国』〜生きる〜

第28章 希望


第三者目線

「…なお、分かってると思うけど。現時点で子どもの父親は…」

「…分かってる。分かってるよ。この世でも…この、よでも…」
なおはそれ以上言葉を繋げず、泣きだしてしまう。

「…とりあえず、信長様には伝えるから、二人で考えて…」
家康もそれ以上の事は言えなかった。

なおにとっては初めての懐妊。

産まない選択をする事は、なおの身体にもそして、心にも更なる負担を強いることになるのは、嫌という程わかっていた。

だが…もし、望まぬ懐妊であるならば…それもまた、なおを傷つけることになる。

『…どちらを選ぶのか…判断が難しい』
家康は顔を曇らせた。


「おかあさん…」
なおは沙耶に縋り付く。

『あんな事がなければ…』
苦しさに胸が詰まる。

「なお…大丈夫よ」
沙耶はなおを優しく抱きしめる。

「…大丈夫じゃ、ないよ…信長様の…じゃないかも…し、しれな…い…何で!お母さん…何で!ああぁ〜〜」
なおはどうしようもない胸の苦しさ、哀しみに、泣き叫ぶ。

泣くことで呼吸が乱れて、増す苦しさになおはパニックに陥る。

家康は外に飛び出すと薬湯を持って来て、飲ませようとしたがなおは拒否するように、身体をばたつかせる。
懐妊してる身に何かあってはいけないと、強く抑えることも出来ないでいた。

「なお!!」
なおの只ならぬ泣き声に、戻っていた広間からかけてきた信長は、家康の手から薬湯を奪うように取り上げると、自らの口に含みなおを抱きしめ、口移しで薬湯を流し込む。

「んんっ…やっ…」

信長の胸を、頭を押し抵抗するなおを、しっかりと抱きしめ、何度か繰り返す内に、なおはその身体をくったりと信長に預けた。

「なお…大丈夫だ。暫し眠れ…」
涙に濡れたなおの頰をそっとなで、褥にそっと横たえる。

「何があった」

「…広間で話します。沙耶様…なおを頼みます。秋野も来て…」
家康は深い溜息をつくとそう言って、重い足を広間へと向けた。











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