第28章 希望
第三者目線
秋野の御膳が運ばれ、三人は夕餉を食べようとしていた。
冷めててはいけないとの政宗の配慮で、なおの粥や汁物などは新しいものに取り替えられた。
「さあ、食べましょう」
沙耶は声をかけ、皆で食べ始める。
なおは、粥の入っているお椀の蓋をとり手に取った。
「…ぅうっ」
温かい湯気を吸い込んだ瞬間。今までに感じたことのない吐き気が込み上げてきて、慌ててお椀を置いた。
「なお!?」
「なお様!?」
なおの異変に気付いた二人は、御膳を遠ざけるとなおを褥に横たえる。
「家康様を呼んでまいります」
秋野は、沙耶になおを任せ部屋から駆け出した。
「大丈夫?ゆっくり息をすってね」
真っ青な顔になっているなおの頰に、沙耶はそっと手を添える。
なおは荒い息をするも、少しずつ治る吐き気に落ち着きを取り戻していった。
「ごめんなさい。もう、大丈夫みたい…」
なおは、まだ青白い顔で呟く。
「なお…精神的なものか、身体の不調によるものかとも思っていたから言わなかったのだけど、なおを助けてから生理がないのよ」
沙耶は微笑んでそう伝える。
「…どういうこと?」
なおは沙耶を見つめて…考えを巡らせる。
「………」
沙耶はそっとなおの耳に口を寄せ、呟いた。
「えっ…」
なおは言われた言葉に、耳を疑う。
「そんな…でも…」
そう呟いた時、襖が開いて信長が入ってきた。
「なお…どうした?大丈夫か」
どれだけかけてきたのか、信長は慌てた様子でなおの横に座る。
「…早いし」
背後から家康。
そして、襖の外から秀吉や政宗、三成、光秀まで、中の様子を覗いている。
「なおは本当にみんなに愛されてるのね」
ふふっと沙耶は笑いながら、皆を見る。
「家康様以外は、一度外に出てもらえますか」
沙耶はそう告げると、暫くの人払いを頼んだ。
皆が出ていくと一通りの診察を終えた家康は、沙耶へと向き直る。
「…沙耶様は分かっておられるんですね」
「えぇ、なおは懐妊してます」
家康はその言葉を頷くも、複雑な表情をする。
「…でも、今の状態だと、手放しでは喜べない…」