第27章 微笑み
第三者目線
誰かに呼ばれた様な気がして、なおはゆるゆると目を開けた。
目に見慣れた天井が見えて、褥に寝ていることがわかる。
『夢見たのかな?お母さんに逢えたと思ったのに…そんな事あるわけないよね…』
「なお。起きたの?」
横から聞こえた声に、なおはゆっくりと声のした方へ顔を向ける。
「お、かあさ…ん。うそ、夢じゃないの?」
そこには、なおの大好きな笑みを浮かべた母が、なおを見つめていた。
「おはよう。私の可愛いなお」
そっと手が伸びてきて、頭を撫でてくれる。
ポロポロと涙が溢れてきて、なおはその手をしっかりと掴んだ。
「ほら、そんなに泣くとまた疲れて寝ちゃうわよ」
ふふっと笑いながら手拭いでそっとなおの涙を拭いた。
「おかあさん…どうし、て…」
なおは止まらない涙はそのままに、沙耶に問いかける。
「そうね…どこから話したらいいかしら」
そう言うと、沙耶はあの旅行からの話をなおにし始めた。
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なおは黙って沙耶の話を聞いていた。
「…私、捨てられた訳じゃなかったんだね」
そう呟いたなおを沙耶はしっかりと抱きしめた。
「そんな事…する訳ない。本当にごめんね。一人にしてしまって…」
「仕方ないよ…でも、一緒に行けたらよかった。そしたら…そしたら…」
その後に続く言葉がわかった沙耶は、抱きしめた腕に力を込める。
「ごめんなさい。なお…貴方にまで辛い想いを…。私があの人を家に入れたから…ごめんなさい」
沙耶は涙を流しなおに謝り続ける。
「お母さん。もういいよ。こうして逢えたし、私の大好きなお母さんの笑顔見れたから…私も、生きてて良かった。そうじゃなきゃお母さんに逢えなかったね」
なおは沙耶からそっと身体を離し、手拭いで沙耶の目元をそっと拭くと、そう言い微かに微笑んだ。
「なお…やっと可愛いなおの笑顔が見れた」
涙で瞳を潤ませたまま、沙耶は微笑んだ。
その笑みにつられるように、なおはふふっと笑みをこぼす。
二人は、離れていた時間を埋めるように、取り留めもなく話し続けた。