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『イケメン戦国』〜生きる〜

第24章 許されぬ想い


第三者目線

「そうなのですね」
秋野は沙耶からの言葉に小さく溜息をつく。

「ですが…この世でも自由であっても良いと思っています。私と謙信も…色々ありましたが、一緒にいるから…。
秋野も想う人と一緒にいれると良いですね」
沙耶は微笑みを向け、秋野の手を取った。

「私はなお様が戻られる事が、何よりの望み。それ以上は望みません」
秋野は少し頬を染め俯いたが、すぐに自身にそう言い聞かせるかの様に呟いた。

「信長様の考えている事は、手に取るようにわかります。それゆえ、なおにこれ以上近寄るまいとしている事も…」

「…それも、一つの愛の形」
秋野がそう呟くと、沙耶は微笑み頷いた。

「それで諦めがつき、見守ると決めれるのであれば、それは大きな愛です。けど…信長様はそう出来るでしょうか」
その問いに秋野は答えられなかった。

「信長様が諦めれば、なおはこのままでしょう。医療の発達していないこの時代、食事を取れぬまま生きていられるかもわかりません」

「今もし感冒でも患えば…」
秋野はそう言って、その言葉の怖さに震える。

「本当になおを失えば信長様は…」
沙耶は哀しげに目を伏せた。

「なおの元に戻りましょう」
暫しの沈黙の後、二人は立ち上がり天主を後にした。

……………………………

数日後…秋野の懸念は悪い意味で当った。

氷がすぐに溶けてしまう程の高熱がなおを襲っていた。

「なお様…しっかりしてください」
秋野は声をかけるしかない今の状況が、歯がゆくてならない。

『何も…何も出来ないなんて…』

「…秋野。薬飲ませるから」
いつ来たのか、家康に声をかけられる我に返ると、掴んでいた手をそっと離し場所を空ける。

「なお…ちゃんと飲んで」
少しずつ匙で薬を運ぶが、息の荒いなおはすぐにむせて吐き出してしまう。
同様に、ここ数日飲めていた重湯も受け付けなくなっていた。

「なお様…お願いです。飲んで…飲んでください」
秋野は縋り付くように、なおの身体に身を寄せる。

「…くそ!どうしたら」
普段素直な感情を表に出すことの少ない家康も、その苛立ちを隠そうとしない。




「…このままなら…今夜超えられなきゃ、朝を迎えられなきゃ…なおは…」
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