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『イケメン戦国』〜生きる〜

第24章 許されぬ想い


第三者目線

沙耶と秋野は、信長に会いに天主へと足を向ける。

「信長様失礼致します」
秋野は声をかけて天主への襖を開けた。

「何用だ」

「沙耶様が信長様にお話を…と」

「俺に用はない」
信長は文机で書簡に目を通しながら、一暼する事もない。

「信長様…なおを…娘を救って頂けませんか」
沙耶は信長の前に座ると、そう問いかけた。

「…俺に救うことなど出来ぬ」
その声色は微かに揺れている様に聞こえるが、表情は変わらず書簡から目は離れない。

「信長様でなければ、なおは救えません」
確信に満ちたその声に、信長はようやく沙耶を見た。

「何をもってその様に言う!」
信長は沙耶の喉元に素早い動きで、刀を突きつける。

「出ていけ!いくらなおの母とて、容赦はせぬ」
信長は沙耶を睨め付ける。

「信長様!」
秋野は膝を立て沙耶を庇おうとするが、沙耶は片手でそれを抑える。そして、信長の視線を臆する事なく受け止めた。

「信長様…何を恐れているのですか」
沙耶は目線を逸らさぬまま、静かに問いかける。

「黙れ…」

「黙りません…私はなおをこの世界に戻したい。あのまま闇を彷徨わせたくない。私はあの子の強さを信じています。
信長様。貴方は強いけど脆い…」
信長は刀を引くと鞘に納める。

「貴様が去らぬなら、俺が出るまでの事。
話す事などない」
信長はそう言うと天主を出て行った。

秋野は襖の閉まる音と共に、身体を弛緩する。
あまりの緊張に身体が動けずにいた事を実感する。

「沙耶様大丈夫ですか」
動かない沙耶に声をかける。

「大丈夫。あの様な事はよくある事だから…」
沙耶はふわりと笑ってみせる。

「謙信がよくやる事ですから…慣れたくないけど慣れてしまいました」
その言葉に秋野は唖然とする。

「殿方…いや武将と呼ばれる方々は、抱えるものが大きければ大きいほど危うい所があるのですね…」
沙耶は少し目を伏せ、何かを思い出すかの様に呟く。

「本当はそれを誰かと補い合って生きていく筈なのに…政略の名の下にその相手を失ったり、想う相手と添い遂げる事が出来なかったり…」

「沙耶様やなお様の世では違うのですか」

「この世よりは自由です。想いを伝えることにしがらみも…少しの例外はあっても、殆どがありません」
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