第24章 許されぬ想い
第三者目線
「遅い!」
政宗、家康に気をとられている間に、籠の入り口には秀吉の姿があった。
もう既に混戦状態の中、籠の中からなおが姿を現わす。
「沙耶様。お待たせ致しました」
秀吉はそう声をかけた。
「顕如様!あの女子は織田の寵妃ではありません!」
「何!?」
何が起こったのか分からないまま、混乱の最中同胞は次々と捕縛されていく。
「貴様も終わりだ」
顕如を捕らえたのは、そこにいるはずのない謙信だった。
…………………………………
「上杉殿。この度の協力感謝する」
秀吉は敵である謙信に頭を下げる。
「ふん。貴様にも信長にも協力した覚えはない。俺は沙耶を守っただけだ。信長と違ってな…」
「…つっ。」
頭を下げたまま、秀吉は言葉に詰まる。
「謙信様…その様な物言いはやめてください」
後ろから沙耶は謙信に強い口調で告げる。
「事実を言ったまでだ」
謙信は冷たく言い放つと、もう用はないとばかりに秀吉に背をむける。
「秀吉様。申し訳ありません」
沙耶は秀吉に頭を下げた。
「謙信様は、春日山へお戻りください!私はこのまま安土に参ります!」
謙信に向き直り沙耶は強い口調で告げると、家臣の持ってきた馬へと乗ろうとする。
「行かせぬ」
謙信は沙耶を抱きとめる。
「なおは安土に着いた頃。織田様に逢いに参ります。行かせてください」
沙耶は腕の中から、謙信を見上げると微笑んだ。
「…ならば俺も行く」
謙信は自分の馬に沙耶を乗せる。
「秀吉様。案内をよろしく御願い致します」
「あぁ、承知した」
そう言うと、捕縛した者達の事を政宗と家康に頼む。
「秋野。帰ろう安土へ。なおの元へ」
秀吉は秋野に声をかけると、自分の馬に秋野を乗せ安土へと急いだ。
……………………………………
「本当に上手く行くとはな…」
政宗は、秀吉達を見送りながら呟いた。
「…やっとひと段落ですね」
「あぁ。声だけを聞かせて謀るとはな…。それをやろうと言ったのは沙耶姫だと言うし…。退屈しねーな」
政宗はそう言い笑った。
「…もう行きますよ。なおが着いてる頃です」
家康は家臣に指示を出し、乗馬する。
「そうだな。早くしねーとなおの夕餉に間に合わねーや」
「…政宗さん…お母さんみたいですね」
家康はそう言い笑った。