第23章 二人の母
第三者目線
秋野は、沙耶に申し出て、1日交代でなおを見守る事となった。
毎日なおの様子を見ていた沙耶も、身体が限界に近づきそれを心配していた謙信からも勧められ、その申し入れを有り難く受けた。
政宗は、安土より運んだマクワウリや、びわ等のフルーツや野菜を砂糖と共にジュースの様にし、水の代わりになおに飲ませる様にした。
家康も、時間を見つけては近くの山へと分け入り、薬草を探した。
傷につける軟膏は、安土て作らせ運ばせた。
暇を見つけては、なおのそばへ行き様子を見る。
政宗は、こまめに時間をかけジュースの味に慣れさせる。
「…そろそろ粥が食えねぇーかな?」
政宗は、なおの頰にそっと手を当てる。
「体温も随分戻って来たな。身体が元気にならねーと、心なんか戻らねーからな」
政宗はそのまま髪をそっと撫でる。
「…政宗さん。触りすぎでしょ…信長様が居ないからって…」
家康は呆れた様に声をかける。
「良いじゃねーか。ただでさえ、信長様と恋仲になってからさわれねーんだから。
おっ。佐助。お前も今のうちにさわっとけ」
なおの様子を見に来た佐助に声をかける。
「…いつの間にそんなに仲良くなってるんですか…一応敵ですからね…」
「いつも言ってんだろ。人生楽しまなきゃ損だ。今は戦してる訳でもねーしな」
そう言いながら、にかっと笑う政宗に、家康はそれ以上何も言えず深い溜息をついた。
「そう言うお前だって、ベタベタさわってんだろ」
ニヤリと笑う政宗に
「…俺は治療です」
反論するも、少し目元が紅い家康。
「ふーん。まっ。そういうことにしとくか…じゃ、俺は粥作ってくるから…なおまたな」
政宗はそっと手の甲にキスをすると、颯爽と去っていった。
「…はぁ」
家康はそっと額に手をのせる。
「…早く戻ってきなよ」
その声は少し切なげに響く。
「なおちゃんは、皆さんに大事にされているんですね」
佐助は家康の隣に座り、そう問いかける。
「…まぁ、嫌ってる奴はいないんじゃない…裏表もないし、変な顔で笑うし…」
家康は素っ気なくも優しい声で答えた。
「…そうですね」
そう呟くと暫くなおの寝顔を見つめ続けた。