第23章 二人の母
第三者目線
「…そんな」
秋野はぽろぽろと涙を流し、両手で顔を覆う。
秀吉はそっと秋野を抱き寄せ、黙って背をさする。
「明日、出立だ…秋野行ってくれるか?以前より更に…状態は悪いと思う。また、なおを救ってやってくれないか…」
「…はい」
秋野の声に、秀吉はほっとする。
「秋野。ありがとう。俺は、こっちで今回の黒幕を捜す」
「秀吉様もお気をつけて…」
「あぁ…じゃあ、準備があるだろうから…」
秀吉は回していた腕をそっと離し、立ち上がる。
「なおも一緒に戻ってこれたら…みんなで何処かに出かけよう…」
秀吉はそう呟くと、外へと出ていった。
「なお…」
秋野は準備をしながら、なおに想いを馳せていた。
次の日。秀吉や三成に見送られ三人は春日山へと出立した。
「秋野。時間が惜しい…早駆けする。しっかり掴まってろよ」
政宗は秋野に声をかけ、春日山への道を急いだ。
……………………………
「…政宗さん。あいつらが使いの様ですよ」
春日山城下へ到着した後は、使いの者が待っているので従う様にと言付かっていた。
「チッ…。よりによって…何発か殴っていいか?」
「…はぁ、敵の領地でそんな無謀なことやめてください」
いきり立つ政宗を抑え、家康は馬を降り近づいていく。
「…佐助?だよね。後は真田幸村。わざわざご苦労様…」
かなり不機嫌な様子で家康は声を掛けた。
「お待ちしてました」
「チッ…早くいくぞ」
丁寧な佐助に対し、幸村も同じく不愉快そうに先を歩き出す。
城に着くと荷物を置き、広間へと案内される。
「謙信様。伊達様、徳川様、秋野様をお連れいたしました」
襖越しに声をかける。
三人は広間へと招き入れられる。
「………」
お互いに牽制し合う様な視線を送りあう中、ふすまがもう一度開く。
「謙信様…お着きになられたのですね」
三人は謙信から視線を外し、その聞き覚えのある声の主を見る。
「「「…なお」」」
しかし、そう思ったのは一瞬だった。
その声の主ー沙耶ーは、三人の前に座ると
「なおの母。沙耶でございます」
そう挨拶をした。
「…母?」
「なおの生母だ。そして…俺の奥方だ」
その問いに答える様に、謙信が告げた。