第22章 堕ちる
第三者目線
その日も次々と怪我人がやって来て、なおはその対応に追われていた。
日が落ちはじめ、相討ちを避けるため少しずつ戦の火が消えていく。
『今日はもう少し先の野営地に泊まるって言ってたから…帰ってこないよね…』
手当道具の整理をしながら、ぼんやりと考えていた。
「なお様!」
「は、はい」
急に声を掛けられ、身体が跳ねる。
「申し訳ありません。怪我人がいるのですが、出血が酷くここまでくるのも危険な状態で…すぐそこまで来ているのですが、来て頂けないでしょうか?」
真剣で、申し訳ない様な顔をした男は、なおに懇願する。
「そうなんですね。分かりました。三成くんに伝えてくるので、少し待って頂けますか?」
どこに行ったかわからないと、心配をかけるかも知れない。
そう思いなおは三成の元へ行こうとする。
「なお様。その様な報告はこちらで…とにかく命に危険が…」
そう言われ、なおは報告を任せる事にして、男と共に外へと急いだ。
なおは、自らを落とす闇へと、自らの足で進んでいく。
「どこですか?」
男を追って外へと出たなおは、男へと尋ねる。
男は歩いていた足を止め…なおに振り返る。
「えっ…つっ…」
それは一瞬の出来事だった。
腹部に強い痛みが走り。
苦しさから意識が遠のく。
僅かに開いた目に映ったのは、男の冷酷な微笑みだった。
……………………………………
陽が落ち、夕闇が迫る頃。
三成はなおの姿が見えない事に気付いた。
天幕の中にも、怪我人の元にもおらず…家臣に辺りを捜索させる。
「三成様!これが外に…」
家臣の一人が、薬箱を見つけて来た。
「…後、複数の足跡が…その周りに」
「前線へ報告を!辺りを捜索します!何としても…見つけなければ…」
三成は絶望的な気分を振り払う様に声を上げた。