第22章 堕ちる
第三者目線
「しかし…中々厄介かも知れないな…」
信玄が、ぽつりと呟く。
「何でだ」
面白くなさそうに謙信は問いかける。
「そりゃ、間に入ってくんだ。面白くないだろう。全力同士でぶつかって…信長を潰したい。
それを邪魔しに来るんだろ…まぁ、面白くはねぇな」
いつもと違い…眼光がギラリと光る。
「俺は…斬り合いが出来ればそれでいい」
謙信は表情を変えることなく淡々と答える。
「まぁ…様子見だな。頼んだよ…佐助、幸村」
いつもの優しげな表情に戻った
「「はい」」
「じゃあ、俺は城下に行ってくるから、幸村後は頼んだよ」
信玄は立ち上がるとその場を早々に去ろうとする。
「あっ。また甘味屋行くつもりだろ。あれほど食べ過ぎは身体に良くないって何度行ったら…って、もう居ねーし。
はぁ。ちょっと捕まえてきます。失礼します」
幸村は慌てた様子で信玄の後を追っていった。
「佐助。貴様奴のことはどうするつもりだ」
謙信は佐助を見据える。
「謙信様…佐助を困らせないで下さい」
謙信の腕の中で、話を聞いていた沙耶は身を起こすと、優しい声色で諌める様に告げる。
「だが…敵になってしまったのだぞ」
謙信は沙耶の髪をそっと撫でる。
「前にも言ったはずです。生きてさえいてくれれば良いと…」
沙耶は謙信の手にそっと触れ、その手を握りしめる。
「敵になる事がどうなることか…この時代、それがどういう意味を持つのか…分かっています。
ですが…佐助、貴方には申し訳ないけれど、好きな人のそばで生きていける事程、女にとって嬉しい事はないのです。
私も…謙信…貴方に逢えて幸せだから…」
顔を上げ謙信を見つめる。
「その大事な奴を俺は殺そうとしていてもか…」
「それでも…逢えて良かったと思います。
愛を知らないあの子にとっては…」
沙耶は一筋涙を落とす。
「戦は止められん…許せ」
謙信は沙耶の涙をそっと拭うと、そっと抱き寄せた。
「謙信様。此度の戦。私もいつも通り…」
「あぁ…分かっている。佐助。準備が整い次第、打って出る。信玄にも伝えておけ」
「はい」
佐助は返事をし、部屋を出た。