第21章 幸せな刻
第三者目線
夜の帳が下りる前に、一行は陣を敷く。
なおは、信長から離れ家康の元へと向かっていた。
「家康…お疲れ様」
「…疲れてないけど」
変わらずの素っ気ない返事に、なおは苦笑いする。
「何か用があるって聞いたけど」
「あぁ…薬の場所とかを確認しておいた方が良いかと思って…まぁ、今日は寝るだけだから必要ないかもしれないけど…戦が始まれば教えることも難しいから…」
家康の言葉に頷くと、なおは家康と共に確認していく。
「…怖くはないの」
準備の手を緩めぬまま、家康はなおに問いかける。
「う〜ん。怖くないと言ったら嘘になるかな…でも、信長様も秀兄も勿論家康も居てくれるから…大丈夫」
なおはニッコリと笑いながら家康を見る。
「…そう。戦が始まると付いて居られない事もあるかもしれない…」
家康はその笑顔から顔を背けると、素っ気なく告げる。
「大丈夫。むしろ足手まといにならない様に、お仕事頑張るからでもよろしくお願いします」
なおは改めて家康に頭を下げた。
「…まぁ、そんなに簡単に負ける人達じゃないから…」
そう呟くとまた、黙々と仕事を始めた家康と、仕事を進めた。
……………………………………………
数日の行軍を経て、本格的に本陣が敷かれた。
信長の意向で本陣のすぐそばに、救護が待機する。
なおはそこにいることになった。
「先陣はもう出たんですね」
同じ救護に暫く身を置く家康になおは訊ねる。
「…政宗さんと秀吉さんが行ったみたいだね。まぁ、今日はそんなに大きな事にはならないと思うけど…」
「そっか…」
そう言ったままなおは黙り込む。
「…なおの世には戦はないの?」
家康は何かを考え始めたなおの気をそらしたくて、聞いてみる。
「…うん。私が生まれるもっと前には、大きな戦があったけど…。今はとっても平和だよ。刀持ってたら捕まっちゃうしね…」
なおは少し微笑んで答えた。
「でも、それも信長様や皆が平和な世界をこうやって作ってくれたお陰なんだよね…ありがとう家康」
なおは家康を見つめて、そう言葉を続けた。
「…別に…」
家康は素っ気なく答える。
「家康様!」
その時、大きな家臣の声が響いた。