第21章 幸せな刻
なお目線
出立の朝。
私はいつもより早く目が覚めていた。
陽の昇るのを身体に当たる暖かさで感じながら、眼を閉じブランコで揺れていた。
「なお」
名前を呼ばれる。
私の好きな声。
「信長様…おはようございます」
私は笑顔でその姿を見つめる。
「貴様は…本当に好きなのだな」
髪をそっと撫でられ、その心地よさに眼を閉じると、そっとキスされる。
「はい。大好きです」
私は立ち上がると信長様の腰に手を回し、抱きついた。
「此度の戦が終わったら…また湯治に行こう」
「本当ですか?」
「あぁ…また二人で出掛けよう」
信長様は優しい瞳で見つめて、微笑みかけてくれた。
「だから…共にここに戻るぞ。貴様を離しはしない」
緋色の瞳が朝陽の光を受けて輝きを増す。
その瞳に囚われたまま、私はゆっくりと頷きそっと身体を預けた。
…………………………………
「今度は…凄い人数ですね」
私は信長様の馬に一緒に乗り、戦さ場へと向かっていた。
「軍神と虎が相手だ。これくらいは必要だ」
ゆっくりとした行軍の中、そんな他愛のない話をしながら私は景色を見ていた。
「どうした?」
信長様が急に喋らなくなった私を、心配そうに覗き込む。
「あっ。ごめんなさい。景色に見とれてました」
私はそう言うとまた、周りに目を向ける。
城から遠ざかり、目の前には広大な草原が広がっている。
「ふっ。貴様は…怯えていたかと思うと…。
そんな事今迄感じなかったが…綺麗だな」
信長様は私を強く抱き締める。
「貴様といると、景色も違うものに見えるのだな」
ふっと笑ってキスをする。
「の、信長様!皆が見てます!」
私は恥ずかしさに下を向く。
「貴様との事は周知の事実。何を今更恥ずかしがる」
なんて事ないように笑ってる信長様。
何だか悔しくて首元に手を回し、キスしようとする。
「つっ…。そこはやめろ!」
信長様は慌てて首元を抑える。
「へっ?どうしたんですか?」
私は何となくを確信にする為に、そっと首元を手でなぞる。
「ここはやめろといってる!」
「もしかして…擽ったいんですか?」
私はふふっと笑いながら信長様を見る。
「そんなことをする奴は…お仕置きだな」
次の瞬間には、深いキスが…。
顔の火照りが増して…私はそれ以上何も出来なくなった。