第20章 信じる
なお目線
「うんっ…」
目を覚ますと隣には信長様がいる。
「信長様…」
身体を動かそうとすると、腰に鈍い痛みがはしる。
「なお?起きたか…」
信長様がそっと私の頭を撫でてくれる。
「先程は無理をさせた…まだ夜明けまで時間がある。寝ておけ…」
その言葉に、急に思い出し身が熱くなっていく。
「ふっ。照れておるのか?」
頭を撫でていた手が私の顎を捕え、目線が絡む。
紅いだろう顔を隠したくて、手を添えようとするとその手を優しく掴まれた。
「隠すな…俺に鳴された顔をもっと見せろ」
にやりと笑いながら、優しいキスをする。
「つっ…。信長様…意地悪です」
益々紅くなる顔を止められない。
「明後日…安土を出る」
わたしを再び抱き締めると、落ち着いた声が聞こえた。
「なお…必ず貴様を護る。共にあってくれるか?」
力強い声に私は信長様の胸に顔を埋める。
「はい」
小さくでも、信長様が不安にならない様に…はっきりと返事を返した。
頭の上にキスが落ちて…私は顔を上げる。
私からそっとキスをする。
「信長様…愛してます。離さないでくださいね…」
涙が流れるのを感じると、そこに唇を寄せてくれる。
「…ごめんなさい…好きだと想えば想うほど…不安で…」
私は正直に今の気持ちを伝えた。
「ふっ。そんなに簡単に拭える不安なら…貴様はそんなに苦しんではおらぬだろう…分かっておる。
だが、俺を見てくれて、感じてくれて、信じてくれようとしているのだろう?
その不安ごと、なお…貴様を愛しておる」
信長様は真っ直ぐに眼を見て言葉をくれる。
「ふっ…うぅっ…」
私は信長様にしがみついた。
抱き締めてくれて、髪を、背を優しく撫でてくれて、私の涙が止まるのを待ってくれている。
それがまた嬉しくて、苦しくて、涙を止める事が出来なかった。
そのまま信長様の暖かい腕の中で、微睡みに落ちていく。
「なお…愛してる」
そう呟く信長様の、優しい声を聞きながら…。