第20章 信じる
第三者目線
「他に誰かいたのか?!」
「うん。佐助兄より少し若い男の人。よく見てなくて名前も知らないけど…」
佐助の事で一杯だったなおは覚えていなかった。
「信長様。やはり此度の戦。なおを…」
「連れていく」
信長の声が強く響いた。
「顕如もどう動くか分からん。そばに置いておく」
信長の言葉に、皆が押し黙る。
「引き続き佐助の動向も追え。以上だ」
そう言うと、信長はなおをそのまま横抱きにし、広間を出て行った。
「信長様はなおを連れてくつもりなのか?」
政宗の問いに秀吉は頭を抱え頷く。
「あの様子だと、収まるところに収まった様だな。しかし、あんなにしっかり所有跡付けるとは…」
光秀は愉快そうに肩を震わせる。
「はっ?」
秀吉はその言葉に驚く。
「気づかなかったか?首元にしっかりついてたぞ」
光秀は益々肩を震わせる。
「蚊に刺された跡では?」
「お前相変わらず…馬鹿なの…。俺は今朝から気付いてましたけど…」
相変わらずの三成に、家康は溜息をつく。
「ま、まぁいい。とりあえず、なおを連れていくつもりなら、それなりの準備も必要だ。三成頼むぞ」
話を誤魔化す様に秀吉は話し出した。
「やっぱりそうかぁ〜。手を出す暇もなかったな」
政宗が残念そうな声を上げる。
「お前は…まだそんな事言ってるのか?」
秀吉が呆れたように声を上げる。
「とりあえず、家康。明日から頼んだぞ」
「…分かってますよ」
「はっ?何を頼まれたんだ家康」
「…薬の事教えろって言われたんですよ。戦に行って役に立たないのは嫌だからって…」
家康は面倒くさそうに言い放つ。
「いいじゃね〜か。じゃあ、俺は明日から甘味でも作って差し入れしてやる」
政宗は嬉しそうに家康の肩に手を置いた。
「…なおだけでも大変なのに…余計な事しないでください」
「そう言って、なおを一人占めするつもりだろう」
にやにやしながら家康を見る政宗を、呆れた眼差しで見る秀吉。
「お前は…」
呆れを通り越して何も言えない秀吉。
「家康様と政宗様はとても仲がおよろしいのですね」
斜め上の解釈をする三成。
「くくっ…あぁ良いな」
その皆の様子に光秀は益々肩を震わせた。