第20章 信じる
なお目線
安土に帰ってくると、すぐに軍議が始まった。
『何があったんだろう?』
私も何故か呼ばれて、他の家臣もいるからと、今日は離れた場所に座っていた。
信長様の一声で軍議が始まる。
「光秀。報告しろ」
「はっ。本能寺の襲撃の首謀者がわかりました」
その一声に、皆がざわめきだす。
『私が信長様を助けた時の…』
「誰だ」
「本願寺元僧侶 顕如にございます」
あちこちで、驚きの声が上がる。
『…名前は聞いた事ある様な?』
私がぼーっと考えてる間にも話は進んでいく。
「今の所、所在までは掴めておりません。ただ、此度の戦に絡んでくる可能性は捨て切れません」
「戦に乗じて攻撃してくる可能性があると言うことか…」
秀兄が苦々しい顔をしている。
「三成。此度の戦。策を練り直せ」
「御意」
「光秀。貴様は顕如の動きを追え」
「御意」
「皆は変わらず戦の準備に全力を尽くせ」
「はっ」
信長様は淡々と指示を出していく。
そして、軍議が終わりいつものメンバーが残っていた。
「なお。来い」
信長様に呼ばれ、私は近くへと駆け寄った。
隣に座ろうとすると…。
「そこじゃない」
信長様の膝に乗せられる。
「………」
私は恥ずかしくて、目を伏せる。
「光秀。例の件を…」
秀兄が言うと光秀さんは話始める。
「奴の事が分かりました。軒猿です」
皆が息をのむ音が聞こえて、私は顔を上げる。
「軒猿…と言うことは上杉の…」
秀兄が確認する様に問いかけ、光秀さんは頷く。
「ということは、上杉はなおの存在をすでに知っているということか…これでもし寵妃と分かれば…」
「まぁ、間違いなく狙ってくるだろうな」
政宗が私の顔を見る。
「えっ。私がどうかしたの?」
私は訳が分からなくて、皆に問いかける。
「なお。落ち着いて聞け。奴とは佐助の事だ」
信長様の言葉に身体がビクリと反応する。
「…つまり、佐助って奴は、信長様の敵である上杉の配下の忍びって事…」
家康が詳しく教えてくれて、佐助兄の言葉が思い浮かぶ。
「何処とは言わなかったけど…佐助兄が迎え入れる準備が出来たからって言ってて…私…敵になる所だったの?」
「そういうことになるな」
秀兄が呟いた。
「じゃあ、あの人も…」
私は佐助兄と一緒にいた人を思い出した。