第19章 繋がる想い
なお目線
「秋野!ただいま」
広間の襖を開け、駆け込む。
『なんか雰囲気が…』
「…って、何かあった?」
「…何もない」
溜息をつきながら、家康が呟く。
「なお…」
後ろから声がして。
「あっ。ごめんなさい…」
「急に駆けるとびっくりするであろう」
信長様が私の頭を撫でる。
「で、どうしたのだ」
「あっ。そうだった。家康!私に薬の事教えてください!」
私は家康にそう言って頭を下げた。
「…はぁ、何なの急に…」
家康は面倒くさそうに私を見る。
「あのね。戦についていくことにしたの!だから、今度はきちんと役に立ちたいと思ってて…応急処置は出来るから、薬の事教えて貰いたいと思って…。
私、女だから戦えないし…側にただいるだけだと落ち着かないし…ダメかな?」
私は家康の前に座ると、まくし立てるように話した。
「ダメだ!」
「へっ?」
横から声がして、びっくりすると秀兄が怖い顔をしてる。
「お前…ついてくるのは良いとして、何でそんな事まで…」
秀兄はさっきとは変わって、辛そうな表情をして私の頭にぽんと手を置く。
「ごめんね。心配してくれてるのは分かってる。
でも、信長様についていくだけじゃなくて、私も何か役に立ちたいの…」
私はゆっくりと秀兄に話しかけた。
ふぅと溜息が聞こえて秀兄は私の頭を撫でる。
「…分かった。そこまで言うなら仕方ない。
ただし、無理はするなよ」
そう言ってにっこり笑ってくれた。
「…俺は教えるなんて、ひっとことも言ってないですけど…」
家康がそっぽを向く。
「教えろ。命令だ」
信長様が家康に言う。
「命令はダメです!そんな事言ったら、家康が困ります」
私は信長様を見る。
「…わかりました。ただ、遊びじゃないから…ちゃんとしてね」
家康は溜息と共にこちらを見る。
「ほんと!ありがとう家康!」
私は家康の手を握り改めて、よろしくと頭を下げた。
「…っつ、いいから手を離して…」
「あっ!ごめん。痛かった?」
「…怖いだけ」
そう言って、目線が私の後ろに…。
「なお…他の奴をさわるとは…来い」
私は、帰る間際まで、信長様の膝の上から下ろして貰えなかった。