第19章 繋がる想い
なお目線
「信長様…私のどこが好きなんですか?」
私は、突然湧いた疑問を信長様にぶつけた。
歩みがピタリと止まり、私を見つめる。
「全部だ」
にやりと信長様が笑う。
「…答えになってないです」
私はその答えに不服な反面、臆面もなく言われて顔が紅くなる。
「一目見た時、何故だか分からんが『離したくない』と思った…」
信長様は、ゆっくりと話始めた。
「貴様が馬上から落ちたと聞いた時は、肝が冷えた。
夜に貴様を見ていた時…毎夜魘されるのを見て、胸が痛かった…守ってやりたいと思った」
「毎夜…来てくれていたんですね」
「あぁ…そして、『佐助』」
その名前に、身体が一瞬強張る。
信長様はそれに気付いて、私を抱き締めてくれた。
「奴の事を貴様が持っている不思議な絵で知った。
奴と一緒に笑っているなおを見て…胸が痛んだ。
『こんな笑顔が見たい』と思った」
「反面…こんなにたくさんの人を殺めた俺に…幸せな事などあって良いのかとも思った。
裏切られる事も怖かった。手に入れれば…離れるのではないか…500年先に戻ってしまうのではないか…。
そう思うと…貴様を手に入れることが、怖かった」
私は顔を上げ、信長様の顔を見ると、緋色の瞳が揺れていた。
「だが…そんな想いを超えてもなお、お前を愛する気持ちは止められなかった」
信長様は額にそっとキスをくれた。
「私は…500年先に戻らない。戻りたくない。ずっと信長様の隣に置いてください。
もう私の戻る場所はここしかないから…」
佐助兄の顔が頭を掠めるけれど、それはすぐに消えていく。
私は、信長様を見つめる。
「私は、信長様が好きだから…」
「知っておる」
信長様はそう言うと…今度は唇にキスをした。
唇が離れると微笑みあう。
ふっと笑みが消え。
「戦が始まる…貴様を連れて行きたい。
だが…無理強いはしたくない」
そう告げられた。
「…ついて行きます」
私は少し考えてそう言った。
「そうか…」
「けど…一つお願いがあります。」
「何だ?」
「私に仕事をください!」
元気よく言った私に…。
「くくっ。今度は何をする?」
信長様は愉快そうに尋ねてくる。
「その前に、家康に頼まなきゃ」
私は笑って駆け出した。