第19章 繋がる想い
第三者目線
信長となおは帰る前に散歩をしてくると、朝餉が終わると出て行った。
「しかし…良かった。本当に良かった」
食後のお茶を秋野に入れてもらい、秀吉はそう呟いた。
「信長様のお気持ちはしっかり伝わった様ですね」
秋野はまだ少し赤い目をしながらも、いつもの様に微笑んだ。
「…もう、こんな事ごめんです」
家康は面倒くさそうに呟く。
「家康…目が赤いぞ…お前も眠れなかったんだろ」
ふっと笑いながら秀吉が言う。
「…寝ましたよ…ぐっすり眠り過ぎたんじゃないんですか…」
家康は顔を背けると、不貞腐れた様な表情をする。
「お二人ともありがとうございました」
「お前が礼を言うことではないだろう。だが、気持ちは分かる…家康。付き合わせて悪かったな」
「…二人とも本当に兄と母ですね」
三人は視線を合わせて笑いあう。
「だが…これから戦が始まる」
穏やかな日々が二人のために続いて欲しいが、それを許さない状況がまだあるのは確かだ。
そう思うと、秀吉は手放して喜んでばかりもいられなかった。
「また、戦へ同行させるおつもりでしょうか?」
秋野は先の戦での、なおの怪我を思い出す。
「…今度の戦は、総力戦になる。安土に置いておくより、側に置いた方が安心だろうね」
冷静に家康は答える。
「信長様なら間違いなくそう考えるだろうな…正直どちらが安全かなんて、分からない…」
「…あの人の弱味となるかもしれないから。あっという間に広がるだろうしね。なおという寵妃が出来たことは…」
徐々に表情の曇る秋野に気付いた秀吉は、秋野の手を握る。
「大丈夫だ。どうなろうと、信長様や俺たちが守るから、2度とあんなことでなおや秋野が傷つかない様に…」
秀吉はふわりと笑いかけると、秋野の表情も少し緩む。
「…俺、邪魔ですか」
家康の一言に秀吉はハッとし、秋野の手を離す。
「いや…すまん」
秀吉は少し目の端を赤くして、頭を下げる。
「…人たらしは秋野にも発揮されるんですね」
呆れた様に家康は秀吉を見る。
「いえ、心配させて申し訳ございません」
秋野も頭を下げる。
「秋野!ただいま」
微妙な雰囲気を壊す様に、なおが駆け込んで来る。
「って、何かあった?」
「…何もない」
そういう家康は小さく溜息をついた。