第18章 ずっとそばに…
なお目線
昨日は、あれから一度も目が覚めなかった。
気がつくと朝日が昇っていて、部屋を明るく照らしていた。
「なお様。おはようございます。良く眠れた様で良かったですね」
明るい声で秋野が声をかけてくれる。
『昨日の事が、夢みたい…でも、全部話しちゃった。
もう…信長様と逢う事もないのかな…』
昨日…信長様は苦痛に満ちた顔をしていた。
言葉で言ってても…きっと私を受け入れる事は難しい。
それは私が一番分かっている事だ。
そう考えていた。
「なお様。本日は、近場の湯治場に行くことになりましたので、準備を致しますね」
「えっ?あの、秋野と?」
「私も行きますよ。もちろん、信長様も…」
秋野はさも当たり前だと言わんばかりに、私に笑顔を見せる。
戸惑う私を余所に、準備を始める秋野を唖然と見つめていた。
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「湯治場までしばし掛かる。貴様は寝ていろ」
あっという間に準備は終わり、信長様の馬に乗せられ、城に残る皆に見送られて安土を出た。
今日は袴を履かせて貰えず、信長様に横抱きにされ同じ馬に乗せられている。
「どうした。なお」
馬上でどうしていいか分からずに、遠くを見ていた私に信長様が問いかけてくる。
「…信長様…昨日のお話は…」
「それは、また後で話そう」
信長様はそう言うと、優しい微笑みを向けてくれる。
『…きっと、今日で終わりのつもりなのかな…』
私は心で思い…少し淋しさを感じた。
信長様の胸に頭を預けると、そっと手綱から手を離し頭を撫でてくれる。
「暫くしたら…少し休もう」
信長様はそう言うと、馬を走らせた。
途中何度か休憩を取り、河原で政宗が作ってくれたお弁当を食べ、日が沈みかける頃、湯治場へと着いた。
「なお様。お疲れ様でした。 秋野と温泉に参りましょう。今日は、一緒に入れますよ」
秋野は少し嬉しそうにしている。
「…そうだね。今日は私が秋野の背中流してあげるね」
秋野の嬉しそう様子に、私も嬉しくなって、準備をしてお風呂へと向かった。