• テキストサイズ

『イケメン戦国』〜生きる〜

第17章 傷


第三者目線

なおの語る言葉が、全て偽りであれば良いと信長は思った。
この乱世でも、女の置かれた状況は褒められたものではない。

だが、500年先の世でも…それは変わらないというのなら…なおをこの世で守りたい。
信長は強く想う。

「なお…それを聞いたとて、やはり俺の気持ちは変わらぬ」
信長は己の胸に顔を埋め、涙を止められないなおの頭を優しく撫でる。

「でも…私は汚い…」

「なお…」
信長はどうすれば良いのか…分からなかった。
今まで自分に分からないことなどなかった。

『どうすればなおを癒してやれるのだ…』
こんなにも、言葉が儚く、意味を成さない物だと思わなかった。

伝えても、伝えても…ザルに水を入れるように、隙間からポタポタと言の葉は落ちていく。

もう一つの手段は…諸刃の剣。

『なおがもっと傷付いてしまうかもしれない』
だが、信長にはそれしかない様に思えた。

信長は意を決して、外に声をかけ秋野と、秀吉を呼んだ。


………………………………………

なおを一旦部屋へと下がらせ、気を落ち着かせる薬湯を家康に作らせ、眠らせた。

天主では、信長と対峙する様に秋野と、秀吉の姿があった。

信長は、二人になおの話を聞かせた。

秋野は泣きながらも、信長から目をそらすことなく。
秀吉は苦痛に満ちた表情を浮かべていたが、秋野同様に最後まで話を聞いた。

「貴様らに聞かせたのには意味がある…」
信長は二人を見据える。

先に声を発したのは秋野だった。

「なお様の心も身体も、信長様の物にするおつもりですね…」
涙は止まっていないが、眼はしっかりと信長を見据えていた。

「あぁ…その通りだ」

「でも、それではなおが…」
反論の声を上げる秀吉の声を遮って、秋野が言葉をつなぐ。

「言葉では伝わらないものが…なお様には必要です。
諸刃の剣である事は、信長様もご承知の上。
だからこそ、私達をお呼びになったのですね」

信長は無言で頷いた。

秀吉は、それ以上の反論の声を上げる事はなかった。

「明日、湯治場に行く。秋野、秀吉。そして…家康を連れていく。秀吉。家康にもこの件伝えておけ」

二人は頭を下げ天主を出ていった。

/ 247ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp