第17章 傷
なお目線
それから、毎日それは続いた。
跡がつくから手を縛られる事はなくなった。
その頃には抵抗も出来ず、ただただそれに耐える日々だった。
でも、拒絶した身体は徐々に反応しなくなる。
そして、私の身体にはたくさんの傷が出来た。
男は痛みですくむ身体を楽しんでいた。
私は…ママと同じ様に…笑わなくなった。
ママが笑わなくなった…その意味を知った。
そして…私はその時も、全てを終わらせるつもりだった。
助けられたのはたまたまだった。
大きなショッピングセンターの屋上。
飛ぼうとして助けてくれたのは…佐助兄だった。
それからは、良く覚えていない。
気がつくと【愛の家】に引き取られ、泥の様に眠り…気がついたら、一年の時が経っていた。
パパだった男に会う事もなく、親子の縁は切れていた。
中学校を何とか卒業して、そのまま愛の家で働きながら、保育士の資格を取った。
笑える様になるのに2年かかった。
綾さんや佐助兄が支えてくれて、様々な理由で愛の家に来た子ども達に癒された。
幸せに暮らしていたのに…。
あの日。
私は一人で買い物に出ていた。
いつもの店で買い物を済ませて、いつもの様に子ども達を迎える筈だった…。
もう、会う事もないと、会うはずがないと、思っていた男に会うまでは…。
車が近づいて来て、声を上げる暇もなくその中に連れ込まれた。
パパだった男の他に、数人の男が居て、何の抵抗も出来ぬまま…。
帰って数日は動けなかった。
そして…。
私は、あの日…。
20歳の誕生日。
京都へ旅立った。
全てを終わらせる為に…。