第17章 傷
なお目線
目がさめると、白い天井が見えた。
京都にいたはずなのに、私は病院のベッドの上にいた。
何が何だか分からなくて唖然としていると、病室のドアが開きパパが入ってきた。
その時のパパはいつものパパで、今起こってる事をきちんと説明してくれた。
パパに旅行の事は知らされてなかった。
ママは置き手紙を置いて、いなくなった。
そして、私は本能寺跡に倒れていた。
【ママに捨てられた】
それだけでも、私にはショックな出来事だった。
でも…本当の地獄は…家に帰ってから始まった。
家に帰るまで、優しかったパパ。
いつも通りとは言えないけど、ご飯も食べて、二人で仲良くテレビを見た。
ママに捨てられた哀しさを紛らわす様に…たわいもない話をして、無理やり笑ってた。
お風呂から上がり…部屋に入ると…哀しくて涙が止まらなくなった。
その時、《コンコン》と音がして、返事をする前にパパが部屋へと入ってきた。
『パパ…』
私は哀しみを抱えたまま、泣き腫らした目でパパを見た。
今まで見たことのない、光のない眼に恐怖が込み上げた。
『パパ…どうしたの?』
問いかけても答えないまま、パパは距離を詰めてくる。
私は少しずつ後退るけど、とうとうベッドの端に追い詰められた。
パパは無言で私をベッドに押し倒す。
『パパ!やめ…』
パン!と音がして頰に痛みが走る。
『黙れよ』
今まで聞いたことのない声と、痛みに身がすくむ。
頭が真っ白になり、何も考えられない。
その間に、手は縛られパジャマが乱暴に引きちぎられた。
『いやー!』
声をあげたら、また平手が飛んできた。
そして…口にタオルが詰められた。
何をされるのか…分かったけど、痛みに…恐怖に…身はすくみ、どうする事も出来なかった。
パパは、私の身体を触り、ひと通り撫でまわす。
あそこに指が入った時は、痛みに絶叫したけれど、その声はタオルに吸い込まれる。
痛みしかないこの行為がいつ終わるのか…それだけを考えていた。
上を向いていた私の身体をうつ伏せにし、腰を上げられる。
次の瞬間、考えられない程の痛みが全身に走り、私は気を失った。
次の日の朝。
私は…自分の身に起こった事が夢であって欲しいと願っていた。
でも、それは現実で…。
それ以上に…もっと絶望的な日々が待っていた。