第16章 両想い
なお目線
広間に行き襖を開くと挨拶する間もなく。
「なお。貴様の席はここだ」
信長様が隣に準備された御膳を指差す。
「えっ…」
戸惑う私を無視して、秋野は私の手をとり引っ張っていく。
「さあ、なお様」
「う、うん」
私は戸惑いながらも、信長様の隣に腰を下ろす。
『…居心地悪い』
みんなの顔を見るのが恥ずかしくて、下を向く。
「なお」
信長様が優しく名前を呼んでくれて、顔を上げる。
「えっ…」
顔を上げた瞬間唇に何かがふれる。
それが信長様の唇だと気付いた瞬間、顔から火が出るかと思うくらい紅くなる。
「こういう事だ。お前ら、もう手を出すなよ」
余裕のある表情でにやりと笑う信長様。
「お屋形様…お戯れが過ぎます」
秀兄が溜息と共にいうのが聞こえる。
「くくっ。いいではないか。これで誰も手出し出来ん」
光秀さんが笑いながら言う。
「…俺は諦めない…」
「…いや、諦めて…」
政宗の言葉に家康は溜息をつきながらつっこんでる。
「お二人がお並びになると、雛人形の様ですね〜」
変なところで感動してる三成くん。
『もう…早くここからいなくなりたい』
皆の声を聞きながら、私は黙々とご飯を食べる。
いつもは賑やかな朝餉が、変に静まり返ってて、余計にいたたまれない気分で…。
「なお、食べ終えたら天主に来い」
先に食べ終えた信長様が、私の頭を撫でながらそう言って出て行った。
それを待ってましたとばっかりに、政宗が声をかけてくる。
「なお…その、幸せか?」
「政宗…うん。幸せだよ」
私はにっこり笑う。
「そうか…良かったな」
私の頭をぽんぽんと叩くと、政宗もニッっと笑ってくれる。
気がつくとみんなが笑顔でこちらを見ていた。
「昨日は心配かけてごめんなさい」
私は頭を下げた。
「なお。良かったな。お屋形様なら、きっとお前を幸せにしてくれる」
秀兄が笑ってくれる。
「お前はその様に呆けた面で笑ってるのが似合ってる」
光秀さんが揶揄う。
「…怪我さえしてなきゃ、どうでもいい」
そう言う家康も笑ってくれている。
「なお様が笑っていると私も笑顔になれます」
三成くんもエンジェルスマイルを見せてくれた。
「皆、ありがとう」
私は改めてお礼を言った。