第16章 両想い
なお目線
「んっ…」
身体に布団以外の重みを感じ、ゆるゆると目を開けた。
いつもの天井が目に映り、その重みの正体を探し顔を横に向ける。
「あっ…」
そこには、目を伏せ静かに息をする信長様。
私は走馬灯を見るかのように、昨日の出来事を思い出す。
「私…信長様と…」
顔が紅くなっていくのを自覚する。
「なお…起きたのか?」
顔を見れなくて、目を伏せてる間に信長様は目を覚ました。
「はい…おはようございます。信長様」
「もう少しこのままで良い」
信長様は身体を起こそうとした私の腕を引き、胸の中に閉じ込める。
「でも、そろそろ秋野が…」
昨日の事も謝らなきゃいけないと考えながら、手から逃れようとする。
「そんなに嫌か…」
信長様が少し哀しげに目を伏せる。
「えっ。…そんな…ことはないです」
「じゃあ、今暫くこのままでいろ」
信長様は私の瞼にそっとキスをする。
「…はい」
私は益々紅くなる顔を埋める様に身を寄せた。
少しうとうとした頃。
「なお様」
秋野の声が聞こえる。
「う〜ん。秋野?!あっ。あの…ちょ、ちょっと待って!」
私は慌てて身体を起こそうとするけれど、信長様がしっかり抱きついてて、中々褥から出れない。
「なお?どうした?開けるぞ」
「へっ?秀兄?!あっ。ダメ!ちょっと待って」
その声も届かず襖が開く音がする。
「なお……お屋形様!失礼しました」
パン!と凄い音がして襖が閉まる。
「くくっ。」
「笑いごとじゃないです…」
私は顔を紅くして下を向く。
「仕方ない。起きるか…」
私を抱き締めたまま起き上がると、そっとキスしてくれる。
私はまた顔を紅く染めて俯くしかなかった。
「では、朝餉でな。朝餉が終わったら天守に来い」
信長様は私の頭をそっと撫でると立ち上がり、部屋を出ていく。
「お屋形様…」
秀兄の声と二人の足音が段々遠くなっていった頃。
「なお様」
秋野の声がして。
「秋野…昨日はごめ…」
謝り終わる前に秋野は私を抱き締めた。
「秋野…」
「なお様…よかっ…た…」
私の着物が涙で濡れていく。
「あき、の…ごめ…なさい…し…ぱいか…けて…」
その涙に誘われる様に、涙が落ちる。
秋野を抱き締め返して、暫く二人で泣いていた。