第15章 それぞれの想い
第三者目線
秀吉の落ち着かない様子に、信長は報告を受けた後天主に戻らなかった。
なおが夕餉に来なかった事に関係がある。信長はそう感じていた。
『しかし、光秀は相変わらず聡い奴よ』
光秀の仮説は当たっている。
『これ以上の隠し立ては出来まい』
信長は広間に続く襖を開いた。
「お屋形様!」
「光秀。詮索は無用と言うたはずだが…」
「申し訳ありません」
光秀は平に頭を下げる。
「…そんな不自然な事、詮索されても仕方ない」
「何か言うたか?家康」
「…別に」
家康はふいと横を向く。
「お屋形様。報告せず申し訳ありません」
秀吉も頭を下げる。
「もうよい。光秀の仮説は当たっている。これを見ろ」
信長は元の座に座ると懐から出した写真を皆に投げ渡す。
見た事のない鮮明さと、そこに映るなおに皆は息を飲む。
そして、その隣に立つ男へと目は移る。
「この男が…」
「佐助と申すらしい」
信長はなおの寝言で聞いた名前を皆に告げる。
「どこに仕えているか分からんが、腕の立つ忍だろう。姿を見られたとはいえ、この城に入り込んだのだからな…」
武将達は食い入る様に写真を眺める。
「して、如何ようにする」
信長のその言葉に座は益々静まりかえる。
「まず、難しいかもしれませんが、その鼠の素性調べましょう。光秀頼まれてくれるか?」
「分かった。各地にいる斥候に同時に調べるよう伝えておく」
「相手が分からぬ事には、手も打てません。それでよろしいでしょうか」
秀吉は信長へと目を向ける。
「好きにしろ。話は終いだ」
信長はそう言うと、今度こそ広間を後にした。
「なおがいる事はどうやって知ったんだろうな」
政宗がふと疑問をもらす。
「なおが今まで外に居たのは2度だ。本能寺。戦に出た時。それを考えると、調べる範囲も狭まるな」
秀吉は考えながら言葉にする。
「…面倒くさいけど、なおを守ってやらないと、これ以上あんな顔は見たくない…」
家康はいつもの調子ながら、心配そうな顔をしている。
「おっ。珍しく本音か?」
政宗が揶揄う。
それに動じる様子もなく家康は静かに語りだした。
「…政宗さん…なおが来た日の事覚えてますか…」