第15章 それぞれの想い
第三者目線
夕餉の後、緊急の軍議が行われた。
「何?!甲斐の虎と越後の龍が生きてると!」
光秀の斥候からの報告に、皆一様に驚いた。
「それだけでなく、その二人は手を組み戦の準備を始めているとの事」
光秀は淡々と告げる。
「…こちらも早急に準備を始めろ」
「はっ!」
信長の一声に其々の役割についての話合いを行う。
その話がひと段落ついた頃。
信長が天主へと戻るのを見送り、皆を残すと秀吉はなおの件を話した。
「情報がないなら、本人に聞くしかないが…」
秋野さえ拒絶した今、他の者が話を聞ける気もしなかった。
「…前に城に鼠が一匹入って来た」
光秀は唐突に話し始める。
「その件は聞いてないぞ!」
「そう怒るな…信長様に口止めされたのだ」
光秀は呆れた様に秀吉の顔を見る。
「それより裏の警備を増やし、それからは入っていないが…その鼠、なおの部屋の近くにいた」
「何?!」
皆が驚いた声を上げる。
「勿論、あの間抜け面が間者とは思わんが…この時代に知り合いがいる事は確かだろう」
「でもよ。知り合いったって、安土城の外に出たのはこの前が初めてだろ?知り合う機会もないじゃね〜か?」
「政宗の言う事はもっともだが、もし仮になお以外に時を超えた奴が居たら?」
光秀の仮説に皆が一様に口を閉ざす。
「実は、この鼠を見た奴が居て。信長様に其奴を合わせた後、この件はこれ以上探るなど言われた」
「何故そんな事を…お屋形様を狙う奴なら、大変な事になる」
秀吉は慌てた様に声を上げる。
「そこだ。信長様には、鼠が誰か分かっていて其奴の狙いが分かっていればこそ、それ以上の追求を避けた」
光秀の仮説が少しずつ信憑性を帯びてくる。
「秀吉。なおには確か兄が居たそうだな」
「あぁ。血は繋がっていないが兄代わりがいると…まさか!」
秀吉は不可能だと思いながらも、その可能性も頭に浮かぶ。
「俺はその男だと思っている」
光秀は静かにそう告げた。
「もし、今日そいつと接触があったとしたら、なおがそうなることもあり得る話だ」
「…それに、そいつここに忍び込んだって事でしょ…並の忍じゃないよね…」
家康は面倒だと言わんばかりに溜息をつく。
「信長様に聞くしかねぇな」
政宗がそう呟いた時
上座の襖が静かに開いた。