• テキストサイズ

『イケメン戦国』〜生きる〜

第15章 それぞれの想い


第三者目線

秋野は少し遠くなったなおの部屋を見つめていた。

今きっとなおが泣いているだろう事を想うと、走り出したい気持ちに駆られる。

その気持ちをぐっと抑え込み歩き始める。

秋野は、下を向いて歩いている事に気づかないほど困惑していた。

「おーっと…」
目の前でした声に秋野は顔を上げる。

「秀吉様。失礼致しました」
秋野は危うくぶつかる所だったその非礼をすぐに述べた。

「…どうした?」
下げた頭の上に秀吉の言葉が降ってくる。

「いえ…何も…」

「何もって…泣いてて何もない事ないだろう…」
秋野はその言葉に、自分が泣いている事に気付いた。

「申し訳ありません。失礼します」
慌てて目元を拭い、その場から去ろうとする秋野の手を秀吉は掴み、無言で歩く。

「秀吉様…」
近くの空き部屋に入ると、秋野はぬくもりに包まれた。

一瞬のことに何が起こったか分からなかったが、冷静になると秀吉の腕に囚われているのがわかった。

「秀吉様。この様な事は…」
秋野は身じろぎするが、男の力には敵わない。

「秋野。泣きたい時は泣け。
我慢する事はない。
お前となおは本当に親子の様だな。」
その言葉に、秋野の涙は止まらなくなってしまった。

……………………………………

「申し訳ありません」
秋野は暫く秀吉の胸で泣いていた。
泣いた事で落ち着きを取り戻した秋野は、そう言って秀吉の腕から出た。

秀吉は先程と違い、すんなりと秋野を解放する。

「落ち着いた様だな。暫し待て…」
秀吉は秋野を座らせ、お茶を用意する。

「どうした」
お茶を一口飲んだのを見て、秀吉は声をかけた。

「なお様に何かあった様です」

「何かって?」

「わかりません」

「…そうか。実は、俺がなおに付けていた護衛が先程帰ってきて、なおを見失ったと言ったので様子を見にきたんだ」

「そうなのですね。間違いなくなお様はお部屋に帰ってこられています。ただ……逢いたく、ないと…」
そこまで言って、秋野はまた声を詰まらせる。

「わかった。お屋形様や他の皆に報告して、他の情報を探ってみる。なおの部屋の前にも一人見張りをつけよう」
秀吉はまた秋野を抱きしめると、落ち着くまで側にいた。




/ 247ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp