• テキストサイズ

『イケメン戦国』〜生きる〜

第14章 恋心


佐助目線

「おい。良かったのか?」
幸はなおの姿を目で追いながら、俺に尋ねる。

「今は…何を言っても…行こう。俺の用も済んだ」
そう告げると長屋を出る。

「いいのか?」
幸のその問いに答えぬまま、俺は歩き出す。



『最後のあの顔は…』

あんな顔させるつもりはなかったのに

頬を染め他の誰かを想うなおを

誰かになど渡したくない気持ちが溢れた。


「暫く逢えないし、敵になれば益々…」

「幸。ありがとう。どのみち暫く逢えない」

『怯えさせてしまったから…』
その言葉は口にする事が出来なかった。

……………………………………………………

「おや?姫は連れてこなかったのかい?」
茶屋で待ち合わせた相手は、満面の笑みで迎えてくれた。

「おぉ…何かな…」
幸は言い淀む。

「良いのかい?佐助」

「今は…」
それ以上は口に出せない。

「佐助にも姫を上手に扱う方法を教えてあげなきゃならないな」

「信玄様は上手じゃなくて、手当たり次第って言うんだろ」
幸はそう言って信玄様を睨みつける。

「幸。酷いぞ。」
そう言いながらも幸の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「やめろよ」
幸が逃げ回る。

「俺は戻ります。上司が怖いので」
そう言うと2人を置いて歩き出す。

「戦の準備を始めると謙信に…」
信玄様は俺の背中に声をかけた。

「はい」
一度振り向き一礼すると、俺はまた歩き出した。

……………………………………

「謙信様」
俺はこの時代で上司になった男に声をかける。

「1人か?」
振り返らずにそう問いかけられる。

「はい」
返事をした瞬間、刃が俺を襲う。

「連れて来いと言ったはずだ…」
息も切らさず喋りながら、次々と刃が向かってくる。
黙って避け続けていると

「謙信様、そこまでに…」
襖が開らき声が聞こえた。

「ふん。佐助。沙耶に助けられたな」
そう言いながら謙信様はやっと刀をしまってくれた。

「沙耶様。申し訳ありません。なお様を連れてこれませんでした」
俺は頭を下げた。

「なおは元気でしたか?」
優しい微笑みを浮かべている。

「はい」

「それが聞けただけでも、私は嬉しいから…」
沙耶様はまだ怒っている謙信様にそう告げた。






「…逢いたいだろうに…」
謙信様の言葉に、俺の胸は痛んだ。
/ 247ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp