第2章 「今宵の『アリス』が君だったんだ」
「まずは僕の事から説明しようか。…聞き取りづらかったらゴメンね。でも僕も頑張って話すから。」
彼は私が注いだ紅茶を床にわざとこぼした。そしてそのカップに新しい紅茶を注いでいく。
こぼした紅茶のシミは絨毯に少しの間できたが、その後ゆっくりと消えた。
__貴方の名前は?
「僕のことはルーイと呼んでくれ。」
彼はどこからかもう一つカップを用意してまた紅茶を注いだ。私のよりも少しだけ少ない量だ。
__本名
「ルーイだよ。愛称なんかじゃないよ。」
聞くのがあほらしくなて無視した。
ルーイは左腰のポケットから瓶を取り出し、その中に入っていた角砂糖を入れ近くにあったスプーンでまぜた。
__何故、声が聞こえるだけでそんなに嬉しそうなの
「僕は昔から『ためらい』を持ってるからね。」
こいつ、あえて答えないつもりだ。
__どうして私の言いたいことがわかるの
「悪いけれど、今はそれについて話すことができないんだ。限られた時間しか君はここにいられないからね。」
抽象的な言葉を選ぶわけでもなく、単に説明するのが面倒なのかルーイは私の質問をかわしていった。