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月の国のアリスと狂気と恋心

第2章 「今宵の『アリス』が君だったんだ」


私はすかさず言おうとする『__今ならまだ間に合うんじゃないか』と。

「無理だよ。もう満月が消えかかっている。消えかかっている時間帯に行こうとすると行こうとすることはできるけど、失敗すると君の存在は両世界から無かったことにされる。」
状況は絶望的らしい。
そして今更だが、私がよくこんな現実味のない話を見ず知らずの男にされ、信じているのかが信じられない。
まるで自分が自分ではなくなってしまったみたいに。
もう、私のいるべき世界には当分帰れない。2年間もこの世界で過ごさなくてはならない。

「大丈夫、住む場所は紹介してあげるよ。きっと君も気に入ると思う。名前の件はもうリスト化されてしまっているから『十六夜由香』の名は使えない。使ったらきっと君は殺されてしまう。だから、『アリス』を名乗って生きていけばいい。」
__それはバレないの?
「大丈夫。ワンダーランドでは国民には『アリス計画』は知られてないよ。しかも、アリスなんて名前は一般的な女性名の一つだしね。君がアリスと名乗ったって別に怪しまれたりはしないさ。」
ザッ、ザッ、ノイズが聞こえる。
「服はこれを__て、過ごせばいい」
ルーイの声が聞こえない。彼はそれでも服を差し出す
彼が差し出す服は、『不思議の国のアリス』が着てそうな水色の可愛い服だった。
エプロンには、黒いうさぎの詩集がされてある。正直、好きなタイプだ。
彼は、私の手を取り手のひらになにかを乗せた。
「お守り代__に、頭につける__だ。きっと君を守__くれる。」
手には黒いリボンがあった。リボンの真ん中には一つ青く輝く宝石が飾られている。

「そ__ろ、僕の声が聞こえな__なってきただろう?それはもう、__がワンダーランドに__されてしまう証拠さ。さて、最後に一つ。」
最後に聞こえた声は妙に鮮明で綺麗で奇妙で。


「いってらっしゃい、君を愛してくれるワンダーランドへ!」
そして、暗い。
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