第21章 神か悪魔か 2 (軍隊パロ)
先日の人体実験施設での任務から数日後。
「失礼します」
ドアを開けると、広い室内。
眼下に大都会が見渡せる大きな窓を背にして中央にデスクがあり、そこに目的の人物がいた。
戦略の達人、勝利を呼ぶ王、いろいろと呼ばれているが、一様にして感じる意味合いは「天才」だということ。
しかし当の本人はそんな呼び名に全く興味はないようで。
「…お前か」
「総司令官」
「なんだ」
「辞めさせてください」
「何故だ」
「何故だじゃないです。毎度毎度突っ込み隊長任されて、私幾つ命があっても足りません!特攻隊長ですか私は!」
「そのつもりだが?」
机上の書類に目を走らせていた彼…バージル総司令官は、視線を上げて私を捉えた。
途端に息が詰まる。もっとたくさん言ってやろうかと思ったが、容姿端麗で信頼度抜群、実力者でもある彼に面と向かって暴言を吐くのはさすがに勇気が要った。
だから私は、無言で封筒を差し出す。
「何だこれは」
「辞表です」
「汚い字だ」
「ほっといてくださいよ」
「辞める事は許さん」
「なら長期休暇頂きます」
「1ヶ月後に第七基地への進攻が決まっている」
その言葉に一瞬動きが止まった。第七基地は要塞を兼ねた大きな基地だ。
敵の進攻を迎え撃つ精鋭が揃っている場所でもある。
癖なのだろうか。瞬時に基地全景と隊員の配置を考えていた。これからやるべき事、備えておく事を考え、そこではっと我に返る。
黙ったのは一瞬だっただろうに、バージルにはそれで十分のようだった。
薄く色の無い唇が僅かに孤を描いた気がした。