第1章 MILK CANDY
「…他の?」
「―――っ」
顔を離さないまましゃべるバージル。
―――こんな近くで話さないでほしい…!!
バージルにつかまりつつも、極力離れようとする。だめだ、もたない。心臓がもたない。
バージルは少し考えて言った。
「そんなに嫌なら、俺がお前に菓子を渡すのはどうだ」
「え…?」
突然の提案に、思わずバージルを見る。
彼はボトムのポケットに手をつっこんだ。
「…お菓子、持ってるの?」
「あぁ」
うなずいたバージルがポケットから取り出したのは、確かに飴だった。
ミルク味の、小さな飴。それをぽかんと見詰める。
「まぁ、俺が渡さなければやはりいたずらされる事になるのだが」
「いえっ! ください!お菓子ちょうだい!!」
慌てて手を差し出す。
いたずらするなんてもっとごめんだ。できるなら、飴一個で済ませたい。
バージルはそうか、と頷くと、手を差し出すの前でおもむろに飴の包装を解いた。
「……?」
てっきり掌に乗せられると思ってスタンバイしていたのに、拍子抜けする。
手でくれるんだろうか、とが見ていると、彼はそれをためらいもなく口に入れてしまった。
途端に顔をしかめる。
「甘いな………」
「ちょっと…何やってるの? 私に飴くれるって、」
「あぁ、今やる」
ガサガサと飴の包装を丸めたバージルはふっとと視線を合わせ。
「え………」
の後頭部を手で支え。
ふわっと、バージルの匂いが立つ。すっとした、古書のように落ち着いた香りと、清潔なシャンプーのような香り。
私、この匂い大好きなんだよなぁ…。頭の何処かで呑気に考えている辺り危機感がない。
その隙をバージルが逃すはずもなく、薄い唇を僅かに開いてにそっと口付けた。