第1章 MILK CANDY
早速いそいそと出掛ける準備をするを、
「―――う …何?」
バージルは止めた。
「今更菓子を買ってきてはハロウィンの意味がないだろう」
「そりゃそうだけど…」
「菓子がないのなら、いたずらだ」
の深紅の髪をすきながら、唇へ持って行く。
その流れる動作に、は一気に赤くなった。
「ちょ…っ 何…!」
バージルの手からぱっと髪を奪い、慌てて離れる。突然すぎて動転する。
しかしこちらを見つめるバージルの氷の瞳は驚くほど落ち着いていて、淡麗な表情が少し面白そうに微笑んでいて、は更に動転した。
「じ……冗談やめてよねっ」
自分でも恥ずかしいと思うくらい、口がまわらない。バージルはそののあまりの変わり様に、思わず肩を震わせた。
いつもと全然違う。
それが面白くて――
「――もっといたずらしたくなるな」
「はあ?」
無言で、一歩にじり寄るバージル。
「…………」
あとずさる。
「な…何……」
更に一歩にじり寄るバージル。
「や…やめてよ。こっち来な……」
次の瞬間。
トンッと音がしたと思った瞬間。
「―――――!!?」
目の前に、バージルの瞳があった。
まるで水面だ。音もなく波は高まり、迫ってくる。吐息がかかるほど近い。
気づいた時には逃れられない。整った顔が、すぐ近くにある。
「―――やっ!!」
突き飛ばそうとしたが、いつの間に動いたのか背中にバージルの腕があった。
「や…やめてよちょっと!いたずらなら他のいたずらすればいいでしょ!?」