第9章 嫉妬している、と言えばいいのか
ひとつ通路を外れた所を歩きながらちらりとバージルを見ると、こちらには全く見向きもせずに分厚い本とにらめっこしてた。
バージルの事だ。私に気付いてないはずないのに。
そんな重い本2時間も持ってちゃ疲れるよ、と心の中で呟いた。
せめて姿を見ていたくて、バージルが遠くから見える位置に行く。
少し離れた文房具置き場。減っているものがないか、並びがぐちゃぐちゃになってないか、ぼんやりとチェックする。
すると。
「あのーすいません」
「はい」
声を掛けられて振り返ってみれば男の人。
歳は若い。私くらいだろうか。視線が合うとあからさまに笑顔。
「なるべく細い筆ペンを探しているんですけど、どれが一番細いでしょうかね?」
「えっと…少々お待ちください」
わざわざ他の店員を呼ぶまでもない。自分で対応できるだろうと、筆ペン置き場に行く。
男はその後をついてきた。
そして、それを遠目にちらりと見るバージル。
はとりあえず細そうなものを手に取っていると、男は話しかけてきた。
「すみませんね、手間を取らせて」
「いえ。こうも種類があるとわからなくなりますよね」
「そうなんですよ。別にどれも変わらなく思えるんですけどねぇ」
笑いながら話す。説明を見て、細さを見ながら男と話し。
いくつか候補を上げたは男に向き直った。
「これが細いと思うんですけど…申し訳ありません、サンプルがないのがいくつかございまして…」
「いいえ、十分ですよ。どれが細いかなぁ…」
半ば呟きながらが差し出す筆ペンに手を伸ばす。
迷うようにうろついていると、ふっと手同士が触れた。
その瞬間。
「おそらく」
「わっ!」
背後から突然聞きなれた声がして飛び上がる。
とっさに振り向いてぽすんとぶつかったが、見間違えようもなくバージルだった。