第9章 嫉妬している、と言えばいいのか
私がバイトの日。バージルが休みの日。
彼はよく、本屋に来る。
まあバージルが物凄い本好きだって事はわかってるしね。ああ、今日も来てるなって思って。
ワイシャツにすらりと足の長さが強調されるストレートパンツ。遠目から見てもすぐにわかるスタイルの良さ。
今日はどこに行くのかと思ったら法律関係の所で立ち止まった。まさかと思っていると、手にしたのは予想通り六法全書。
前来た時は世界遺産の所。見る所が決まってないのが面白い。
本を取るとぺらぺら眺めるんじゃなくて、最初からじっくり読んでいってる。
そのまま2時間くらいしたら、ふっと飽きたように読むのやめて帰るんだ。
そしてまた数日後来て、続きから読み始めて。
お金をかけず知識を溜めるつもりなんだろう。
ただでさえバージルは博識なのに。
そんな様子を見ていた私は、バージルが来たからと言って喜び勇んで駆け寄るわけでもなくて。
そりゃあ駆け寄って話していたいけど。
私とバージルの仲はバイト先の同僚も知っているとはいえ、お客様にツッコミ入れたり敬語使わないで話すなんて公私混同、駄目なのはわかってる。
だから私は、レジが暇になると本の整理をしにバージルがいる所とは違う所に行った。