第8章 あんず飴
そこの屋台ではあんず飴をひとつ買うとサイコロを使ったくじができ、ゾロ目が出るとその数に応じておまけがあった。
これでやらないわけにもいかない。は屋台の人に言う。
「ひとつください」
「200円ねー、サイコロ振って」
言われてサイコロを二つ手中に納め、念じるように2、3回振り。
ガラスボウルに投げるように落とし。
「1と…3…」
「はい残念!」
まあ、ゾロ目が揃うとは思っていなかったが。
期待しなかったと言えば嘘になるが、くじ運は悪い方だ。
自分用にもう一つあんず飴を買うと、はその店を後にした。
2回目もはずれだった。
再び公園の入り口に戻る。バージルはまだ来ていないようだ。
バージルなら真っ先に入り口に来そうなのにな、と思いながら木を背もたれに立つ。
あんず飴を掲げて光にかざすと、反射してきらきらと柔らかく光った。
それに微笑みを浮かべ、同時に漂う飴の香りに誘惑される。
「早く来ないと食べちゃうよ」
喧騒に紛れるように小さく呟くと。
「それは困る」
声と、あんず飴をひとつするりと奪う大きな手。
驚いて振り返る。
「バージル…!」
「全く、何をしているかと思えば。一人で祭を満喫か?」
「今来たの…?」
「が屋台に向かった時からいたぞ」
「声かけてくれればよかったのに!」
「何をするのか見ていた」
声でわかる上機嫌。きっと意地悪そうな笑みを浮かべているのだろう。
落ち着いた様子から見て、慌てて探してくれた風でもなさそうだ。
少し期待してたのにな。むくれて唇を尖らせる。