第1章 MILK CANDY
「………ハロウィン?」
はきょとんとした声をあげた。
バージルが部屋に入って来たと思ったら、唐突に手を差し出されて「今日はハロウィンだ」と言ったのだ。
露骨に眉をしかめる。ハロウィンなんて、子供の時にだってしなかったのに。
今更言われてもピンと来ないし、大体何をするのかも忘れていた。
バージルは無表情に手を突き出したまま、言う。
「菓子をくれなければいたずらをする事になっている」
「え…そうだったっけ?」
「あぁ」
記憶を辿るが思い出せない。
それよりも、バージルがハロウィンを言い出した事には驚いていた。
「バージルがそんな子供っぽい事言うなんて思わなかった」
目の前のバージルが急に子供に見えてきて、は笑った。
バージルは気分を害したのか手を引っ込め、少しむっとした顔で言う。
「悪いか」
「悪くはないけど」
確かに、いつもだったら言わないだろう。の言う通り、子供っぽい事は嫌いだ。
ただ今年は柄にもなく、たまには乗ってみようかと思っただけで。
正直、に笑われるのは不本意だった。
「あ でも今私、お菓子持ってないよ?
せっかくだから買って来よっか」
初めは驚いていたものの、久しぶりのイベントに嬉しそうにする。