第4章 チョコレートの渡し方
自分で食べよう。は思った。
私のなんて、あげても嫌がられるだけだ。
バージルは、他の知らない人から貰ったチョコレートを食べるので精一杯。
食べる量をこれ以上増やしたくなんかないに決まってる。
そっと、クッションの下から袋を取り出した。
無理矢理押し込まれ形が崩れた袋。
持って立ち上がる。
「何だそれは」
さりげなく立ち去るつもりだったのに、バージルはの手に持つ袋を目ざとく見つけた。
はひやりとして、バージルを見る。
いぶかしげな顔。
何て言えばいい?
何て言えば納得する?
「…友達から貰ったの」
とっさに思いついて言った言葉だった。
我ながらいい理由だ。
しかし、バージルは少しおかしそうに言った。
「自分で作ったものを自分で食べるのか?」
鼓動がはねた。
目を見開く。
「…え……」
何で…
「それと同じものを知り合いに渡していただろう。
仕事中に見かけて声をかけようと思ったがやめた」
嘘。
仕事場、あの近くだったの?
どうしよう。
バレた。
でもここで認めたら――
は袋を開けた。
できるだけさりげなく。
動揺を隠せ。
「俺のではないのか」
袋を開けたに、バージルが言う。
立ち上がり、ハンガーにコートをかけ、袋に手を突っ込むを不思議そうに見ている。
いつもと変わらない表情。
別に欲しそうではない。
「違うって。バージルはあんなにあるんだから十分でしょ」
「他の誰かにやらないのか」
「あげないよ」
袋からひとつ取り出し、包みを解く。
それを口にいれようとした瞬間…