第4章 チョコレートの渡し方
やがて。
「―――。」
―――ん?
入口の外から、聞き慣れた声がした。
ぼんやりしていたは我に返るとドアを見る。
人影。誰かいる。
耳をすませていると…
「。開けてくれ」
バージルの声だ。
いつも勝手に入ってくるのにどうしたというのだろう。
はチョコレートをクッションの下に押し込むと、慌ててドアを開けた。
すると。
「…うわぁ…」
大量の紙袋に両手を埋められたバージルがいた。
袋の中には箱やら袋やらがぎっしり詰まっていて、そこからチョコレート色が垣間見える。
「どうしたの…それ…」
思わず聞く。
「依頼人からと通行人からと待ち伏せしていた女から…」
は紙袋をいくつか持った。
大小集めて7つ。よく集まったものだ。
「今日のおやつ、決まりだね…」
中にはケーキもいくつか入っていて、は苦笑した。
バージルは紙袋を床に置いて息をつく。
コートを脱いでソファの背もたれにかけると、どさりと座り込んだ。
「わけがわからん。依頼人ならともかく、通行人と待ち伏せは全く面識のない女だったぞ」
「バージルが気付いてないだけじゃないの?」
「知るか。こんなに甘いものを貰っても困る」
もうたくさんだ、と言いたげなバージルの表情。はわずかに眉をしかめた。
バージルと向かいのソファに座り、自分の横にあるクッションをちらりと見る。
―――何だ…あんなに貰ったんじゃ、私のなんていらないよね。
ぎゅっと手を握る。
先程まであんなに悩んでいたのに、いざあげられないとなると胸が締め付けられるようだった。