第39章 病
「行くぞ」
「はい」
歩き出すと、は人の波に流されそうで危なっかしく。
バージルは手をさしのべる。
繋いでいないと離れてしまいそうで。
は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに握り返してきてくれた。
この小さな柔らかい手。
誰のものでもない。俺だけのものであって欲しい。
心の狭い自分を思い知った。他の男の目に触れさせる事にすら嫌悪。
を縛り付けたくない一方で、閉じ込めてしまいたい気分。
俺は病気なのかもしれないな。目を合わせれば返ってくる笑顔が欲しくてたまらない。
お前は俺がこんな思いをさているなど全く知らないのだろう。
それでいい。
俺はそれを出来る限り押し隠そう。
だがもし、抑えが効かなくなったら。
その時は。
2007/07/16