第39章 病
が交差点で不意に男に手を振った。
バージルはハッとして成り行きを見守る。
これはまさか…。
男も手を振り、去り際に何か言った。
それにが笑って返し、男も笑い。
二人はそれぞれ正反対の方向へ。
「………!」
バージルは今すぐに駆け寄って抱き締めたい気分だった。
しかし別れてすぐでは駄目だ。徹底的に隠さなくてはならない。
見れば、は駅へ向かう様子。家に帰るには駅を通らなければならないのだ。
バージルは迷わず踵を返し、早歩きで歩き出した。
「あれ」
駅の踏み切り待ちをしていたは、ふと横の店に見慣れた姿を見つけた。
輝く銀髪。あの均整のとれた黄金スタイル。
後ろ姿で確信が持てなかったが、横顔を見てやっぱりそうだと思う。
バージルだ。出掛けてたんだ。
心が嬉しくなって、人の目を縫って近づく。
数歩手前に来たところで、バージルも気付いた。
瞳が交わる。ああ、格好いいなぁ。
「出掛けてたんですね」
「あぁ、まあな…」
見ているのは風邪薬。
手に取っていたものをバージルは棚に置く。
「友人と出掛けていたのではなかったか?」
「はい。でも用事があるっていってさっき帰りました」
「そうか」
内心、その男の用事とやらに感謝。
バージルはに向き直った。
「帰るか?」
「あれ。風邪薬はいいんですか?」
「あぁ。参考までに見ていてだけだ」
そうですか、と微笑む。
やっと笑顔が見られた。俺が一番安心できるもの。
全て、俺のものだ。