第39章 病
視線の少し先にはと男。ショーウィンドウに足を止める。
指をさして何かを言い、笑い合い。
少し離れた所には、目立つ銀髪を隠すために帽子をかぶり、サングラスをかけたバージル。
人混みに紛れて自分もウィンドウショッピングをするフリをしながら…要するに、尾行だった。
いくらなんでもそこまでは、と思ったが、今頃が男と何をしているのかと思うといても立ってもいられなくて。
気付けば帽子をかぶりサングラスをかけ、家に鍵をかけていた。
男とは端から見ても楽しそうで、バージルは持っている鞄を握り潰す。
の笑顔は自分だけのものではない。わかっているのに、悔しくて。
今すぐを連れ帰りたくて。
二人の会話はここまでは聞こえない。聞こえる所まで近づけばバレる可能性がある。
辛抱だ。尾行していたなんて知られたらおしまいだ。こうして見ていられるだけでもよしとしなくてはならない。
苛立つ気持ちを抑える。男がに変な触れ方でもすれば、すぐに拐いかねない気分だった。
それから数時間。食事をして街を歩き回る二人は、バージルから見ていてとても心臓に悪く。
は気兼ねなく男に触れているし、男も男でが人とぶつかりそうになると肩を寄せて守る。
とても紳士的。全く素晴らしい男だ。
が、バージルはストレスの嵐。
を守るのは俺の役目だ。触れるな。
知らずのうちに人を刺すような視線。これで相手にダメージか何か与えられるのではないかというほど睨んでいたが、サングラスのおかげで周りの人間は気付いていない。
これは拷問だ。
新手の、最高にきつい拷問だ。
いつ終わる。俺はいつに触れられる。笑顔を見られる。
こんな事ならやはり家にいたほうがよかったかとバージルが本気で後悔した。
その時。