第38章 死焉 (男装ヒロイン逆ハー)
―――思ったよりバレるのが早かったな
は思う。
これから二人はどうなるのだろう。女だとわかった途端、急に優しくなったりするのだろうか。それが嫌なのに。
片方はおちゃらけていて片方は不器用なものの、二人は優しいから。
すると。
突然頬に鈍く痛みが走り、はよろけた。
見上げるとバージルの顔。少し怒っている。
軽く平手で殴られたのだと気付いた。
「女であるなら尚更だ。なぜ身を捨てるような闘い方をする」
「………」
お説教か。は眉根を寄せる。
女という単語は、あまり聞きたくなかった。
「俺達はお前の事が大事だ。それは男であっても女であっても変わらん。しかし己で女であると自覚しておいて、なぜ傷を作る」
答えない。
答える理由がない。
答える必要がない。
バージルはそれからの返答を待つように黙ったが、何も言わない彼女にため息をついた。
「傷が深ければ死ぬ。それはわかっているはずだ。半魔である俺達でさえ、その理からは逃れられん」
「………」
「死んだら全て消えると言ったな。消えてお前はどうするつもりだ? 遺してきた者に懐かしんで欲しいのか? それとも目の前の光景が死んでしまいたいほど嫌なのか?」
「…………」
「俺は、ここは嫌いだが今の現状は嫌いではない。目に見えるものと見えないものを混濁するな。はき違えるな」
立ち上がり、無理矢理鞘での顔を上げ、視線を合わせる。
「確信と思い込みは違うぞ」
の瞳は揺らいでいた。
もうそろそろ意識が限界だとか、お説教の前にする事があるだろうとか、いろいろ思ったが。
何も言えなくて、ただアイスブルーの瞳を見つめる。