第38章 死焉 (男装ヒロイン逆ハー)
―――今…何か柔らかかったような…
の胸をじっと見つめる。気のせいか? 気のせいだと思いたい。
何か盛り上がっているのも気のせいだと思いたい。
きっとそうだ。無理矢理思い、布を握り締め再び胸に手を置く。
もたもたしていられないのにやたらと怖い。自分は今、何か取り返しのつかない事をしているのではないだろうか。
恐る恐る押してみる。
ふわりとした感触。それにぴたりと手が止まる。
これは。
これは本当に、男の身体なのだろうか?
「何やってんだよ。さっさとしねーとが死んじまう」
何も知らないダンテはようやく落ち着いたのか、バージルを急かす。戸惑うバージルの横での服を更に広げ、傷口を確認。
―――止血用の布ないし…バージル何硬直してんだ、こんな時に
咎めるような乱暴な手つきでバージルの手から布を奪い取り、自分が代わりに止血を試みようとする。
胸の上に布を置いて押し当てた、瞬間。
返ってくる柔らかい感触。
「え?」
それに気付いたと同時に。
「何をしてる」
声と、ダンテの顔を鷲掴みにする手。
視線を上げると、顔をしかめた。
「…」
ダンテは呆然と見つめる。視線の先の黒髪の彼は、どこか焦ったような顔をしていた。
服がはだけられているのを見ると慌てて掻き寄せ、隠す。
痛いのも気にならないくらい必死に二人から遠ざかる。
「…………」
沈黙。
バージルとダンテはを見つめたまま、頭をフル回転させて思考していた。
いや、思考するまでもない。
あの柔らかさは。
あの膨らみは。
「……なんだっ」
いたたまれなくなったががっつくように言った。
前屈みになった肩をさらりと黒髪が滑る。