第38章 死焉 (男装ヒロイン逆ハー)
ダンテはおかしいと思った。の姿が見えない。
あれほど舞い闘うならばひとところに留まる事などないというのに。
姿がさっきから見えない。
銃をとっさに悪魔に向けた。そして舌打ちをしてホルスターに戻し、駆ける。
それに気づくバージル。瞬時に悟り、今までのペースが暇つぶしだったとでもいうように一閃で悪魔を払い。
ダンテが横から悪魔を斬って。バージルが下からに閻魔刀を斬り上げ。オマケだと言わんばかりにダンテが銃を数発。
砂と化す身体。風にさらわれていく。
目もくれず視線を走らせ、彼を捉えた時。
二人は凍りついた。
「…!」
血だまりにぽつりと倒れていた。傷だらけだ。さっき諫めたばかりだというのに。
バージルがその身体を抱き上げる。
かろうじて意識はあるようだった。
胸が弱々しく上下し、頬を軽く叩くと反応も返る。
ただ、この怪我は危険だ。
ぬるりとした感触。の身体が滑る程に血は流れ、バージルは止血の為に彼の身体を横たえる。
ダンテをちらりと見ると呆然としていた。
視線に気付いてびくりとするも、おろおろと困惑するばかり。バージルはあからさまに舌打ちをする。全く、こういう時にダンテは使えない。
するりと首のスカーフをはずす。汚れていないとは言えなかったが、この場にある中で一番綺麗ではあった。
なるべく空気にも肌にも触れてなかった部分を表にし、に向き直る。
―――胸の出血がひどいな…。
ためらいなく服の前を大きく開け、血でこびりついてしまったところは丁寧に。
胸にサラシが巻いてあった。既に半分以上赤黒く染まり、裂かれた下に傷口が見える。
それを少し外して傷にかからないようにし、上から布を押し付けて。
「――!?」
思わずバージルは飛び退いた。